私の境界線

Aさんの投稿作品

 自分と外界との境界線は、自分自身の体。それが普通。そんなことは 分かってます。ところが私 の境界線は少々たるんでいるらしいの。
 つまり時々、どこからどこまでが自分かが分からなくなってしまうのです。

 例えば、あの話……
 ある晴れた夏の日の夕暮れ、それは不思議な時間。大好きな幸せピンク色から涼しい深緑色にか わっていく空。そしてそれらの余白部分みたいに薄っペらな真ん丸お月さんを眺めていたのです。
 と、その時でした。お月さんの前を家路を急ぐ3羽の大きな鳥の影が通って行ったのは。私はそ の中の1羽にぶつかりました。
「あたっ!!」
 でも、私の体は無事でした。
 確かに、彼の羽が私にぶつかって曲がり、通りすぎてまた曲がるのを感じたのだけれど。つま り、その時の私の境界線は私の体ではなく、鳥にぶつけられた真ん丸お月さんだったのです。

 気がつくと日はとっぷりと暮れていて、私は慌てて境界線をたぐりよせて、だいぶ伸びてしまっ たそれを両手いっぱいプレゼントのリボンみたいに抱えて、家路を急ぎました。
 たぶん晩御飯でも食べれば、また元に戻ると信じて。
 そして晩御飯には、境界線をこぼさないように気をつけなくちゃと思いました。